通信帯域波長可変Erファイバレーザの構築とその発振特性

(京大総合)○田部 勢津久・花田 禎一
Construction and lasing performance of high-power Er-fiber laser
tunable in telecommunication wavelength range
○Setsuhisa Tanabe and Teiichi Hanada
Faculty of Integrated Studies, Kyoto University, Sakyo-ku, Kyoto 606-8501, Japan

A tunable Er-fiber laser which has output power of about 100mW in a wide range of 1530nm〜1580nm was constructed with a tunable signal source and its laser characteristics were investigated. The small signal gain at -30dBm was larger than 35dB in 1525nm〜1565nm, whereas the gain at 0dBm was less than 20dB under pumping power of 150mW. The width and flatness of the output power spectra were improved with increasing pumping power and signal power of up to 10dBm. The slope efficiency was more than 40% and laser threshold was less than 10mW for all the wavelengths longer than 1530nm.

{緒言}波長多重(WDM)通信の時代を迎えるに当たり、システムを構築する種々のデバイス(光増幅器、スプリッタなど)の開発とその広帯域にわたる光特性評価が必要である。通信波長帯域である、1450nmから1650nmにわたる波長域のうち、80nm程度の波長可変幅を有する単一モードレーザダイオード(LD)が実用化され、WDM用アンプの利得特性評価のための信号源として用いられるなど、用途が広がっているが、出力としては数mW、最大でも10mW程度であるのが現状である。これ以上の出力のものを購入しようとすると、LDでは無理で、高価で大型なレーザ装置が要求されることが多い。我々も非シリカ系ガラスをホストとする広帯域WDM用光デバイスの開発と材料研究を行っているが、より高出力の光源を必要とすることもまれではない。本研究ではなるべく安価で、かつ高出力、高ビーム品質の波長可変レーザ光源を得ることを目的として、波長可変LDを外部制御信号源とする、手作りのErドープファイバレーザ兼ファイバアンプ(EDFA)を構築した。そして、その出力と利得特性を励起光強度、信号光強度、波長を変化させて評価し、高出力波長可変光源としての可能性の検討を行った。

{実験}波長1480nmの多モードLD(150mW)を励起源、Alコドープのシリカ系EDF(ファイバ長14m,モードフィールド径5.41μm、カットオフ波長0.88μm)を増幅媒体とするEDFAをFig.1に示すような構成で組み、可変LD(SanTec,TSL-210;1500〜1580nm)を信号源として、ファイバレーザ発振(増幅)実験を行った。WDMカプラとアイソレータには、信光社製の複合型を用いた。出力の評価は光スペアナを用い、波長分解能0.2nmの条件下で、ピークパワー、ASE(増幅自然放出)レベルを各信号光波長(GPIBで制御スキャン)に対して記録し、利得G、雑音指数NFも各波長(=信号光波長)の関数として得た。

{結果}前方励起光強度10mWでは1535nmより長波長で、15mWでは1520nm以上の波長で正の小信号利得が得られた。励起光強度150mWでは、1520nm〜1568nmの波長域にわたり、+30dB以上の利得が得られた。Fig.2に前方励起と双方向励起下でのレーザ出力スペクトル(信号光強度10mW)を示す。1530nmから1580nmにわたりおよそ100mWのピーク出力が得られていることがわかる。Fig.3に信号光強度1mW下でのレーザ入出力特性を各波長に対して示す。殆どの波長に対し、入力閾値が10mW以下で、スロープ効率40%以上の発振特性を示しており、高利得で高出力の波長可変レーザが得られることが確かめられた。出力のフィードバックと励起LDドライバの自動制御を行えば、一定出力波長可変光源とすることも可能である。{謝辞}エルビウムファイバを提供頂いた住友電工(株)に感謝します。

 

 

 
Return